Sennheiserから新たに発売された、IE 100 PROのレビューを行っていきます。
今回は音楽鑑賞におけるIE 100 PROの性能だけでなく、ゲームにおいての性能についても詳しくレビューしていきます。
本来、アーティストなどがライブステージでステージモニタリングをするために使われるIE 100 PROを含むイヤーモニター (イヤモニ) ですが、癖の無い音質と優れた定位、コンパクトデザインで確かなフィット感が得られるインイヤーモニター (イヤモニ) という特性はFPS ゲームにも適正があり、ゲーマーの使用者も多いです。
原音に忠実な自然な音に慣れるという意味でも、極端なイコライジングが施されがちなゲーミングヘッドセットからの乗り換え先としてイヤモニは強くおすすめできる製品です。 (自然な音質で音楽鑑賞もできますからね!)
IE 100 PROのイチオシポイント
- 軽くてつけ心地が良い
- 長時間の装着でも疲れにくい
- 同価格帯の製品と比較してワンランク上のクオリティ
そんなイヤモニでもIE 100 PROはどんな性能なんでしょうかということで、結論から述べてしまうと、IE 100 PROは1万円台のイヤモニとしてはベストバイです。
『とりあえずまともに使い続けられるイヤモニが欲しい!』『結局どれ買っておけばいいか分からない!』という方は答えが出るかもしれません!
早速紹介していきます!
Sennheiser IE 100 PROとは
IE 100 PROはステージパフォーマンス向けのシングルダイナミックドライバー・インイヤーモニター (イヤモニ) です。
ステージパフォーマンスの邪魔にならないように配慮されたコンパクトサイズ設計で、激しい動きでもケーブル・コネクタ部分が破損しにくい高耐久なコネクタが採用されています。
また、音楽制作のモニター用途としても問題無く使える原音に忠実なサウンドで、ステージパフォーマンスだけでなく、サウンドエンジニア、DJと幅広いクリエイターが満足して使うことができるように開発された製品でもあります。
ラインナップとしても一般のコンシューマー向けではなく、プロ用 (業務用) の機材として販売されています。
IE 40 PROとはコネクタ部分が異なるだけで中身のドライバーと設計は同じみたいです。
スペック
製品名 | IE 100 PRO + IE PRO Straight Cable Black |
ドライバー | ダイナミックドライバー |
インピーダンス | 20 Ω (Ohm) |
周波数帯域 | 20 Hz – 18 kHz |
感度 | 115 dB (1 kHZ/ 1 Vrms) |
接続ケーブル | 取り外し可能専用ケーブル |
ケーブル長 | 1.3 m |
付属品 | 1 In-Ear Headphones IE 100 PRO 1 IE PRO ストレートケーブル ブラック (1.3 m) 1 IE PRO シリコンイヤーピース (S,M,L) 1 IE PRO ウレタンフォームイヤーピース (M) 1 ソフトポーチ 1 クリーニングツール |
色 | Black, Clear, Red |
購入した理由
もともとイヤモニが趣味だったのでイヤモニでゲームをしていました。
約15万円くらいのハイエンドなイヤモニは持っているものの、音響メーカーのエントリークラスなイヤモニって意外と購入する機会が無くて持っていませんでした。
1万円台のイヤモニってそこまで大きな差が無いし、3万円台のイヤモニと比べると妥協している点が目立つんです。それならはじめっから3万円台行ったほうがよくね?ということで、初めて買ったまとなイヤモニが6万円でした。アレ?
まあ、そんなこんなで1万円台のイヤモニってやっぱりエントリークラスだもんなあと思っていましたが、前身となるIE 40 PROの評判がかなり良かったので、IE 100 PROの発売を機に購入してみました。
割りかし目立ちそうなREDのラインナップがあったのが決め手です。ちょっとゲーミングっぽい。
届いたIE 100 PROをチェック
それではここからは届いたIE 100 PROを見ていきましょう。
業務用感溢れるパッケージ
イヤモニにしてはコンパクトさが際立つ箱な気がします。その他の音響メーカーであるSHUREとかWestoneとかはエントリークラスのイヤモニであってももう少しごっつい箱です。
IE 100 PROの箱の雰囲気はコンシューマー向けではなく、完全に業務用な感が漂っています。完全に業務用であればパッケージを豪華にする必要も無いので、コストダウンのためですね。
説明文とかは一切ありません。何も分からない一般の人が来るような売り場に置いたら使用用途とか分からなくて、ちょっと誤解を招きそうなくらいです。
そもそも音楽関係者以外で使うのってオーディオヲタクかゲーマーくらいっていう話もありますけどね。
飾りっ気のない内箱
内箱を取り出してみると、イヤモニがバーンと入っているだけでした。
乾燥剤が一緒に収められています。エントリークラスではあるものの、即戦力が求められる業務用なので品質管理にはぬかりがありません。最高。
外箱の内側には箱が押されても直接イヤモニ本体が箱と触れてしまわないようにスポンジが貼り付けられています。
外箱は小さくてエコパッケージなものの、こういう些細なところの気配りも忘れないというのは品質管理の重要さを分かっているメーカーならではの配慮ですね。さすがドイツ!
同梱物
付属品は以下の内容です。
付属品
- ソフトポーチ
- シリコンイヤーピース(S、M、L) ウレタンフォームイヤーピース(1種1サイズ)
- クリーニングツール
- 説明書類
ケーブルははじめからイヤモニ本体に接続された状態で入っていました。
使い勝手の良いソフトポーチが付属する
ソフトポーチは、がま口ポーチみたいなギミックで、少しグッと力を加えるとポーチ入り口に仕込まれた芯素材がしなってパカッと開きます。
留め具が無くてもポーチの入り口にはそれなりな強度があることで、うっかり中身が出ちゃったりとかはしません。めっちゃ使い勝手の良い合理的なデザインです。
外観を詳しくチェック
ここからは箱から取り出したIE 100 PROを見ていきます。
艶消しで高級感のあるボディ
今回購入したのはRedです。ちょっとゲーミング感ありませんか?
艶消しのボディはおもちゃっぽさが無くて高級感を感じます。表面にあるゼンハイザーのロゴもかっこいいです。
R側(右側)イヤモニ本体の裏面にはIE 100 PROと印字されています。L Rの刻印もあるので、左右を間違えたりすることも無くなる配慮がされています。
ダイナミックドライバーが採用されているので、ハウジングには排圧用のベント(小さい穴)があります。
このベントって何のためにあるの?
ダイナミックドライバーは耳に装着した時に、内圧が高くなりすぎてドライバーがうまく振動できなくなるため、内部の圧力を排圧するためのベントが必要になります。
ダイナミックドライバーを採用したイヤホン・イヤモニには必ずベントが空いています。
合わせ面もバリなんかは一切無いので金型の精度も射出成形技術も極めて安定していることが伺えます。業務用と言えどもビルドクオリティは非常に高いです。
コンコンと爪でノックしても薄さを感じられないので、軽量でもかなり硬質で頑丈な樹脂が採用されているのではないでしょうか。
見るからに耐久性は高そうです。
質の高いステム
ステムは先端にイヤーピースが抜けてしまわないようにするための『かえし』が設けられた、よくある普通のステム形状をしています。
中にはスポンジが挿入されていて、ハウジング内部に耳垢やゴミが入ってしまわないようにするための配慮がされています。
イヤーピースは質が低い
イヤーピースにもハウジング内部に耳垢が入ってしまわないようにするためのスポンジが入っていて、スポンジが耳の中へ入ってしまわないように考慮された形状になっています。
個人的にはスポンジが高域をスポイルしてしまっている感じが強くてイヤーピースまでスポンジを付けなくて良かったんじゃないかなと思いました。
付属のイヤーピースはけっこう固めな質感でフィット感が薄いと感じました。その点もあって他社のイヤーピースを使った方が良い気がします。
おすすめのイヤーピースは後の項目で紹介していきます。
取り回しの良いケーブル
1.3メートルのストレートケーブルは、Y字に分岐したケーブルでケーブルスライダーも装備されています。
ケーブルスライダーとは
ライブパフォーマンス用にケーブルをまとめるためのものです。
用途は本来のイヤモニなのでスライダーがあって当然っちゃ当然です。
ライブ会場なんかでイヤモニを装着しているアーティスト達はこのスライダー部分を後頭部まで回して持ってきて、服の中、背中にケーブルを通してワイヤレス送受信機まで取り回しています。
自身の正前では無く、背面にケーブルを通すのが本来の使い方で、ケーブルの遊びを少なくしてタイトにまとめておく、そのためのスライダーです。
ケーブルは程よい柔らかさと弾力のある質感で、取り回しが良く絡まりにくいです。
3.5mmのプラグ部分はL字形状です。用途にもよるんですが、なにかにケーブルを引っ掛けて抜けてしまうということが起こりくいというメリットがあります。
取り回しの良い耳掛け部分
イヤモニ本体接続部分にはワイヤーが内蔵されていて好きな形に変形させることができます。
しっかりとした太さのある形状で取り回しも良いため、耳掛け部分に巻きグセのつけてあるノンワイヤーのケーブルに近い感覚と使い勝手です。
上位機種と統一されたコネクタ
コネクタの端子部分はmmcxに近い設計ですが、mmcxではありません。Pentaconnコネクタというコネクタが採用されているようです。
端子のみで固定されるのではなく、端子の樹脂部とハウジング樹脂部が嵌合になっていて端子以外でも固定される仕組みです。
Shureみたいに軽くクルクル回らないくらいの嵌合で、WestoneのUM Proシリーズに近い重めの回り具合です。
Shureはクルクル回りすぎて逆に取り回しが悪いので、筆者的にはIE 100 PROの固さが丁度いいと思います。
端子の互換性が低いのは少しだけ痛いところかなと思います。
IE 100 PROの使用感
ここからは装着してみた感想を詳しく見ていきましょう。
装着感
IE 100 PROは丸みが無く平べったい形状なので、WestoneのWシリーズに装着感が似ています。SE 215のような耳全体を覆う形状ではありません。
耳の形状によっては、ハウジングのどこかが耳軟骨に当たって痛くなってくるかもしれません。
付属のイヤーピースが硬めにということもあり、イヤモニにしては少しフィット感が薄いという印象を持ちました。
また、ステムの角度的にも付属するイヤーピースのサイズ的にも、耳の奥に差し込むというよりは耳穴を塞ぐような設計のため遮音性は並だと思います。
耳軟骨に当たっていたくなるかも・フィット感が薄いという2つの問題は、イヤーピースを適切な物に変えれば回避できる問題なので、イヤーピースは妥協せず、なるべく自身に合うものを見つけたほうが快適な装着感が得られるようになるので、ここで紹介するおすすめのイヤーピースも一緒に買うのがおすすめです。
IE 100 PROはイヤーピースを交換しても、遮音性についてはあまり改善されない印象です。どうしても遮音性を高めたい場合はComplyのようなフォームタイプのイヤーピースを試してみてください。
そうは言っても、イヤモニなのでヘッドホンやヘッドセットよりは遮音性が高いですからね!
筆者がIE 100 PROに使用したいイヤーピースはSpinfitで落ち着きました。
純正と比べてフィット感が増すのと、イヤーピース内部のスポンジが無くなったことで音のクリアさと高域のきらびやかさが増します。
サイズ展開が豊富なので自身に合うものも見つけやすいのでおすすめです。
他にもおすすめのイヤーピースについて紹介しています。
音質について
ここからはIE 100 PROの音質について追求していきす。
ゲームでも使ってみたので、その感想も合わせて紹介していきます。
音楽鑑賞での音質
IE 100 PROの音楽鑑賞での音質は、暖色系の中低域寄りでフラットなモニターサウンドという印象です。
高域の主張がそこまで強くないので、サ行のような歯擦音が耳に刺さる感じは全くありません。
その反面、モニターサウンドとしては全域のキレや鋭さは甘めな気がします。ボーカルのリップノイズなんかも目立ちにくく、リスニング系のイヤホンと同じくらいの高域の量感です。
普通に音楽鑑賞をしていて楽しさのある音質ですし、長時間使用していても聴き疲れしにくい音です。ただ言い方を変えると、派手で分かりやすい音ではありません。少しだけモコッとした音かなと感じます。
インピーダンスは低めですが高感度では無いので、それなりに出力のある環境、あるいはある程度の音量で再生しないとボワッとした眠たい音になる可能性はあるものの、今まで1万円以上のイヤホンを使ったことがない人からしたら『聞こえていなかった音が聞こえる!』状態になること間違いなしだと思います。
短くまとめると『低刺激で雑味が無く聞きやすくてまとまりのいい上品な音』です。
エントリークラスのイヤモニとしてはかなり頑張っています。SE 215の2ランクくらい上のクオリティです。コレが1万円台で買える日が来るとは技術の進歩って恐ろしいです。
音の分離はエントリークラスのイヤモニとしてはかなり良い方で、全体がごちゃごちゃに混ざってしまうこともなく、楽器構成を見渡せるくらいの解像感はあります。楽器の聞き分けなんかもできちゃいます。
手持ちのモニターヘッドホン、ATH-M50xと比べると、さすがにヘッドホンのATH-M50xよりは解像度が低いですが、音の定位はしっかりしているため、簡易的な音の確認作業としてIE 100 PROは十分に使えると思います。
音場は横と縦に十分な広がりがあり、耳の外で鳴っているかのような感覚がします。狭く鳴っている感じがしないため窮屈に感じることはありません。イヤホンの音のなり方が気持ち悪いと思ってしまう方でもすんなり馴染める可能性がある気がします。
箱出し直後は低域が弾むように支配してしまう完全な低域寄りの音なので、少なくとも12時間以上は慣らし (エージング) をした方がいいです。そこから高域と低域のバランスが良くなってきて音抜けも良くなっていきます。
IE 100 PROはあくまでステージモニター用だということ、音の確認作業用のイヤモニだということを忘れないことが大事です。
このイヤモニで動画サイトとかを見ると録音音声の粗探しができるのでおもしろいです。これが本来の使い方!!
FPS ゲームでの音質
結論から言ってしまうと、IE 100 PROは、持ち前の良質な定位と十分すぎる音の分離感により、ゲーム内で音の方向感を調べるということにおいてはめちゃくちゃ相性が良いイヤモニです。
多くのゲームでは足音が中低域の周波数特性で構成されていることが多いため、IE 100 PROの中低域寄りという特性はアンプを使わずともFPS ゲームで強力なアドバンテージを得られます。
左右上下に開放感のある音場は、臨場感のあるゲームプレイをするのにも役立ってくれていて強い没入感がゲームプレイ中に得られました。
音楽鑑賞ではちょっとだけ刺激に欠ける音質だったものの、もともと刺激の強い音が鳴るFPS ゲームではサウンドプレイの楽しさが強く引き出せます。暖色系の音もゲームでは聴き疲れのしにくさに直結していて、この特性でちょうど良かったと感じました。
高い満足感が得られたので、使ってさえみれば価格的にも納得が行く人が多いと思います。何より、現在アンプでよっぽど極端なイコライジングをしていない限り、これ買っときゃ間違いない感はヒシヒシと感じました。
SE215と比較してどっちが良いのか
ライバルで言うとSHURE SE 215がありますが、SE 215は2010年くらいに発売されたイヤモニで、ドライバーなどの設計が古すぎだと思います。SE 215こそ想定された用途はガッチガチなステージモニターです。
そして、2010年当時というと、一般消費者層には低域ブンブンなイヤホンこそ正義みたいな風潮が強くて、フラットで高解像度のまともなイヤホンがほとんどありませんでした。マジのガチです。
結果的に消去法でSE 215がバズったという時代背景があります。DAP(デジタルオーディオプレーヤー)がMP3プレーヤーとか呼ばれていた古の時代です。(遠い目)
IE 100 PROは最新の設計とドライバーを採用しているため、正直言って、SE 215と比べるべきではありません。
しかし、実際にSE 215をレビューして感じたんですが、フィット感はSE 215の方が良いです。でもハッキリ言って音質はビミョーです!
解像度・音の分離を求めるならIE 100 PRO一択です。フィット感はイヤーピースの交換である程度改善できます。
まとめ
IE 100 PROのレビューを行ってきました。
付属するイヤーピースの質感が高くないというデメリットはあるものの、ウレタン製のイヤーピースも同梱されているので、幅広いサイズの耳穴に合わせることができ、エントリークラスとは言ったものの、ほとんどの人が困ることの無さそうな充実した内容になっています。
ちゃんと相性の良いイヤーピースもあるので、気に入らなければ交換しちゃいましょう。
軽量で程良い遮音性のハウジングは、長時間のプレイでも耳が痛くなったりすることが無く、ついつい長時間ぶっ続けて遊んでしまうプレイヤーには最適な形状です。
耳掛け部分に強度のあるワイヤーを採用したおかげで、耳に掛かっている部分が耳にめり込んできて痛くなってくるということもありません。
IE 40 PROがゲームで絶賛されている理由がこの辺にあると思います。
ゲームではIE 100 PROの安定した抜群の定位と分離感、そして臨場感の得られる広がりのある音場、聴き疲れのしにくさに直結した暖色な音質の組み合わせで、長時間でも快適なゲームプレイができます。
足音や銃声の聞き分けは問題無くできました。そんじょそこらのヘッドセットよりも高音質です。今まで1万円以上のイヤホンを使ったことがない人からしたら『聞こえていなかった音が聞こえる!』状態になること間違い無しだと思います。 (2回目)
音楽鑑賞も楽しくできるので、IE 100 PROがあればなんでもこなせます!
エントリークラスと言えど、¥10,000を超えてしまっていますが、次に何か買い換えるということも考えにくいほどには十分な高音質を得られるイヤモニです。
カラバリも3色なので自分の好きな色から選んじゃいましょう!
ココが良い
- ゲームで相性が良すぎる音質性能
- 耳や耳穴が痛くなりにくい
ココはイマイチ
- 抜群のフィット感を得るにはイヤーピースを相性が良いものから探す必要があるかも
- エントリークラスとしてはちょっと高価かも