マウスは軽いほうがいいのか重たいほうがいいのか、少しだけ謎に包まれています。
しかし、マウスの重量よりも操作性に影響してくる大切な要素があります。何グラムという重量のカタログスペックと感じる重さはイコールではありません。
この記事では、普段からマウスやマウスパッドをバイクや乗り物に置き換えながら解説をしている管理人が、マウスの重量よりも『感じる重さ』で大切なことについて解説していきます。
軽いほうがいいか重いほうがいいか
マウス重量自体の良し悪しですが、これは軽いほうが『慣性』の影響を受けにくいです。マウスの慣性については完全に物理学の話です。
慣性と質量は比例する
- 動かしにくさの値が重量
- 重たくなれば動かしにくくなる
参考文献
そうは言っても、慣性の影響は出しているスピードにもよるので、重さそのまま=慣性というわけでも無くなっていきます。
たとえ軽いマウスでも、早く振って急ブレーキをかけると腕の慣性も影響してきます。重たいマウスでもゆっくり振って急ブレーキをかけるなら慣性の影響を受けにくいです。
ただ、これは一般的に言われていることです。軽いならローセンシ、重いならハイセンシの理屈がこれです。
物理学について掘り下げていくと、分かりにくくなってしまいます。そこで乗り物に置き換えて考えていきます。
今回の解説はよく言われる一般論ではありません。マウスの運動性能についてです。
実重量よりも重心の位置で運動性能が決まる
マウスが『重たく感じるかどうか』は重心の位置で決まります。カタログスペック=感じる重さではありません。
重心位置の調整でカタログスペックよりも軽く感じられるようにもなりますし、重たく感じられるようになります。
また、重心の位置でマウスの『動かしやすさ』という運動性能も決まります。単純に軽量化をしても『動かしやすさ』という運動性能が上がるわけではありません。
つまり、ハイセンシにしたいから『重量が重たいマウスを選ぶ』というだけでは目的の性能は得られないこともあるということになっていきます。その逆も然りです。
マスの集中化が肝
ここからはいよいよ乗り物に置き換えて考えていきます。
マウスをカタログスペック以上に軽く感じられるかどうかは『マスの集中化』をしたかどうかです。やることはバイクとほとんど同じです。
マスの集中化とは
- 重心の近くに重量物を集めること
- バイクならエンジン
- マウスならバッテリー
- 重量物を前後端に置くと慣性の影響が強くなる
これは分かりやすいと思います。自分の手に重たいものを持ったとして、腕を伸ばした場合と折りたたんだ状態でどっちのほうが体を動かしやすいかということに置き換えると簡単に分かります。
絶対に体に近づけたほうが、重りの影響を受けずに動かしやすいですよね。重りを体から遠くにして持つと簡単によろけると思います。
マウスも同じように、バッテリーというマウス重量の約10%を占める重量物を載せているわけなので、バッテリーをマウス重心の近くに持ってくるだけでも動かしやすくなるということです。
マウス先端にバッテリーを積んだら、早く振り回した時にぶっ飛んできそうなのが想像できますよね。
スポーツバイクなら型番の更新で重量がそこまで軽くできなかったとしても、かなり強くアピールする内容です。管理人もスポーツバイクならマスの集中化をしたかどうかは強く気にします。
続いて曖昧なのでオマケ要素です。
バネ下重量の軽量化とは
- サスペンションのバネより下の部品のこと
- タイヤとかホイールとか
- バネ下が軽くなるとサスがよく動ける
- 1kgの軽量化で10kg軽量化の効果がある
バネ下重量も気にしておきたいですが、マウスだとうまく当てはまりません。マウスがそもそもバネ下なのか、マウスパッドがバネ下なのか曖昧です。
ただ、手や腕をサスペンションに置き換えてみるとマウスがバネ下になるので、マウスの重量が軽くなると腕の運動性能が上がるということになります。
それだと一般論的な話になっていくので、マウスパッドのクッションがサスペンションで、マウスのソールがタイヤということにもしておきましょう。順番はちぐはぐになりますが、役割的には同じです。
そうなるとバッテリーの位置は高くした方が、バネ下であるソールよりも離れるので、バネ下重量の軽減的な効果があります。
基本的には軽くていい
マウスが重たいとハイセンシ向きというわけでもありません。マウスが重たいとそれだけ腕の運動性能が落ちます。繊細なコントロールをしたいのであれば、適度な運動性能は残しておかないといけません。
マウスを滑らせた時の抵抗感はソールの形状や貼り方によっても変わります。
基本的には軽いマウスでソールを工夫して抵抗感を意図的に増やした方が自由度は高いです。
実際に感じる重さを試してみる
ここからはバイクに詳しくない人でも簡単なチェックで『マスの集中化』をしたかどうかを調べることができます。
マスの集中化をすると実重量よりも軽く感じる&動かしやすいです。していないと実重量よりも重たく感じる&動かしにくいです。
マウスの重心について
- 重心位置付近に重量物を集める
- 軽い力で動かしやすくなる
- バッテリーを手のひらの近くにする
- 重たく感じにくくなる
重心位置が調整されているとこんな特徴が感じられるはずです。
マウスを表面と裏面で持ち比べてみる
こんな感じでマウスをつまんでみてください。まずは表面からつまんでみます。
つぎはマウスを裏面からつまんでみます。
どっちのほうが重たく感じますか?
手持ちのマウスを片っ端から持ってみてください。
今回は例としてLogicool GのPRO X SUPERLIGHTを使いましたが、このマウスは表裏どちらを向けて持ってみても同じ重量に感じます。つまり、重心位置を調整している、マスの集中化がされているかもしれないということです。
また、重さの感じ具合ですが、マスの集中化をしていないマウスと比べると約10%ほどは軽く感じます。バッテリー重量を感じなくなるようなイメージです。
マスの集中化をした60gのマウスなら、マスの集中化をしていない54gのマウスと同じくらいの重さに感じるはずです。
初期PRO Wirelessだと、この重心位置の調整はされていませんでした。表面を向けて持ったときよりも裏面を向けて持った方が軽く感じます。今だから分かったことですが、PRO X化は単純な軽量化というわけではなかったというわけです。
こんなマウスを2020年に出していたわけですからしばらく一強だったということですね。
それを決定づけるかのように、管理人の手持ちだとバッテリーの位置が大きく異なるマウスで重さが同じに感じられるものがありました。
LAMZU Atlantis MiniとFinalmouse Starlight-12 Mです。重さは1gくらいSL-12 Mの方が軽いんですが、実際に持った時に軽く感じるのはAtlantis Miniです。
Atlantis Miniは裏面を向けて持つと少しだけ軽く感じます。Starlight-12 Mは表裏どちらも同じに感じます。
Atlantis Miniと同じくらいの重さに感じられるのは45gのStarlight-12 Sでした。
両者のバッテリーの位置を確認してみましょう。
Starlight-12 Sは、ほとんどマウス底面かつマウス後部にバッテリーがあります。
Atlantis Miniは、ほとんどマウス天面かつマウス後部にバッテリーがあります。
どちらのほうが重心位置が調整されているか、重量物が手のひらに近いか、簡単に想像できます。
超軽量マウスでもバッテリーの位置、重心位置が調整されていないとせっかくの軽量化が効果的では無いようです。違う言い方をすれば、バッテリー位置を調整すると化ける余地があるということですね。
実重量よりも重心位置で考える
そんなわけで、マウスは重たいほうがいいか軽いほうがいいかではなくて、重心位置で考えたほうがいいです。
マウスの重心について
- 重心位置付近に重量物を集める
- 軽い力で動かしやすくなる
- バッテリーを手のひらの近くにする
- 重たく感じにくくなる
そもそもマウスは止まって使うものではなく、動かして使うものです。動かした時の運動性能を無視して考えるのはやめておいたほうが良さそうです。
また、かぶせ持ち向けなマウスならかぶせ持ち、つかみ持ち向けマウスならつかみ持ち、つまみ持ち向けマウスならつまみ持ちをしたときに、重心位置がちょうどいいようにできていることがほとんどです。
マウスの設計思想も無視しないほうがいいポイントです。
重心位置をおさらい
最近の流行りはこのバッテリー配置がメタです。バッテリーの位置が手のひらに近いため、持ち上げやすく振られにくく疲れにくいです。
特にデメリットはありません。
需要がありそうで無さそうな配置なので謎が多いです。重心位置が調整できる機構になっていれば買う人はいそうな気もします。
ただ、先端が重たいので持ち上げにくいですね。先端が垂れます。
先端重たくするよりも先端に滑らない形状のソールを貼ったほうが合理的かもしれません。
2020年くらいまでのバッテリー配置だと思っています。まだ無線マウスをやったことないメーカーとかはこの配置になっているかもしれません。
ただ、バッテリーの位置が手のひらから遠いため、この配置は重たく感じます。デメリットと言われるかどうかは謎です。
つかみ持ちなんかで手のひらがマウス後部を保持していたら持ち上げにくさもありません。部品点数を減らせるのはメリットですね。
ワイヤレスマウスだからこその調整
また、有線マウスだと重量物が無いので重心位置の調整が難しい場合もあると思います。バッテリーを搭載したワイヤレスマウスのほうが重心位置の調整の面では大きなメリットがあります。
いままでは無線はケーブルの煩わしさが無いことだけがメリットのようでしたが、重心位置の調整は無線ならではと言えるんじゃないでしょうか。
マスの集中化をしていそうなメーカー一覧 (管理人調べ)
- Logicool G PRO X マウスシリーズ
- Finalmouse ワイヤレスマウスシリーズ
- VAXEE ワイヤレスマウスシリーズ
- ZOWIE ワイヤレスマウスシリーズ
- LAMZU ワイヤレスマウスシリーズ
- Pulsar ワイヤレスマウスシリーズ
なぜか、どのメーカーも重心位置の調整についてそこまでアピールしていません。自社のマウスだけしか開発していないからなんですかね。
個人的には、うまく重心位置を調整できたのであれば、ガンガンアピールしていったほうが軽量化レースから脱却できるのでいいんじゃないかと思ってしまいます。
だって、重心位置を突き詰めてしまえば、60gのマウスでも50g台の操作性ですよ。もう十分じゃないでしょうか。
まとめ
マウスの重量について、同意を得られそうな得られなさそうなことを解説してみました。
マスの集中化とバネ下重量の軽量化が効いていそうという話でした。
2020年に発売されたPRO X SUPERLIGHTが選ばれ続ける理由が見え隠れしています。実際の重量よりも重たく感じにくくされた工夫がされています。
なんだかんだ樹脂製のマウスなら50g前半で頭打ちな感じがします。それなら重心位置の調整をしても同じくらいの効果が出せます。
たぶんプロ選手で実際にテストしているんでしょう。使いにくくないように緻密な調整がされていそうです。
マウスの重心について
- 重心位置付近に重量物を集める
- 軽い力で動かしやすくなる
- バッテリーを手のひらの近くにする
- 重たく感じにくくなる
マウスを何台も持っている方はそれぞれの実重量ではなく、実際に感じる重さを比べてみてください。
そして、表面と裏面で持ち比べてみてください。
うまく重心位置が調整できているマウスは、どちらの向きで持っても同じくらいの重さに感じるはずです。
そして実重量よりも軽く感じているはずです。同じ重量でバッテリーの位置が違うマウスがあれば比べてみてください。
このテストで違いを感じられたなら、マウス重量の選択肢が一気に広がります。重量がネックだと思っていたマウスも試してみてもいいんじゃないでしょうか。