audio technicaから販売されている、音楽制作向けモニターヘッドホン、ATH-M50xのFPSゲームでの使用感をレビューしていきます。
音楽制作向けとして開発された本モデルですが、現在ではコンテンツクリエイターやゲーマーと幅広く使用されているようで、そのポテンシャルの高さが世界中で評価されています。
結論から書くと、FPSゲームでも抜群の定位感を得られて問題なく使用できるヘッドホンです。
既存のゲーミングヘッドセットでは不可能な超高音質でゲームをプレイできます。
音質に拘りがあり、ゲーミングヘッドセットを使用したくない方にはベストマッチな製品だと感じました。
ゲームだけでなく音楽鑑賞にも使えるので、一粒で二度美味しいという表現ができるヘッドホンです。
audio technica ATH-M50xとは
ATH-M50xはプロの音楽制作向けに開発されたモニターヘッドホンです。
モニターというのは、音楽を聴くことが目的ではなく、音楽制作時に、現在どんな状態で音が再生されるか確認することを目的としてつくられたもののことを意味します。
特性としては原音になるべく忠実に再生されるようになっているものがほとんどで、この特性はFPSゲームにも正しい音を聞き分けるという意味では非常に相性が良いです。
既にゲームでモニターヘッドホンを使用されている方は多く存在します。
ATH-M50xはアメリカでモニターヘッドホンの超定番モデルとなっていて、Amazonのレビュー件数は24,661件というとんでもない数字になっています。
実際に、このヘッドホンはYoutubeの「歌ってみた」等でもボーカルがモニター用に使っていることが確認できるほどです。それだけスタンダードな商品で、評価基準としても定評があります。
スペック
イヤホンと比べると感度は低いですが、インピーダンスは38ΩなのでPCでも十分に音量が取れます。
ステレオミニプラグも当然のように付属しているので、届いたらすぐに使うことができます。
形式 | 密閉ダイナミック型 |
ドライバー | φ45mm、CCAWボイスコイル |
出力音圧レベル | 99dB/mW |
再生周波数帯域 | 15~28,000Hz |
最大入力 | 1,600mW |
インピーダンス | 38Ω |
質量(ケーブル除く) | 285g |
プラグ | φ6.3mm標準/φ3.5mmミニ 金メッキステレオ2ウェイ |
コード | OFCリッツ線1.2mカールコード(伸長時約3m) OFCリッツ線3.0mストレートコード OFCリッツ線1.2mストレートコード |
購入した理由
ゲーミングヘッドセットの多くは音質がよく有りません。これに尽きます。
ゲームで使用するには十分な音質で、更にマイクもあって便利かもしれませんが、オーディオにも関心がある人間からすると、その音質の悪さは気になってしまいます。
わざわざそれなりな金額を払って音質を妥協する行為というのは不快感がとんでもありません。
音楽鑑賞を快適にできないならゲーム用としてしか使わないし、ゲームをしない時間は置物になるだけです。それにしては高価過ぎます。
また、デザインも「いかにもゲーミング」なものしか無く、モダンでスタイリッシュなデザイン性のものはほとんど存在しません。あったとしても上記の音質を満たすものはありません。
定位を含む、優れた音質とデザインを求めるのであれば、モニター用しかありません。実はゲーミングヘッドセットと価格差もほとんどありません。
候補としてはMDR-CD900ST(通称、赤帯)もありましたが、あちらはダサい設計が古く、長時間使用するのは至難の業という意見が散見されたので、デザイン的にも優れたATH-M50xを購入することにしました。
届いたATH-M50xをチェック
パッケージ
国内メーカーの製品ですが、元々は海外向けということもあり、シンプルでスタイリッシュな箱です。
箱は頑丈で、高級感もあり、多用途に使われることを想定していて業務用といった感じは一切しません。
同梱物
付属品は以下の内容です。
3本の着脱コード
- 1.2m カールコード
- 3.0m ストレートケーブル
- 1.2m ストレートケーブル
脱着可能な標準プラグ
- オーディオインターフェースやアンプで使える
ポーチ
- 持ち運ぶ方はあると便利なやつ
外観を詳しくチェック
外観
外観はこんな感じですね。余計な装飾が一切無いシンプルなヘッドホンです。
ゲーミングデザインよりも筆者はこっちのほうが好きです。デスクに置いても自然と溶け込んでくれるんですよね。
全体的にビルドクオリティは高く、安っぽさは感じません。
バンド頭頂部にはメーカーロゴがあります。見る角度によっては存在感抜群ですね。
使用感
ATH-M50xは折りたたみ式のヘッドホンです。コンパクトに折りたたんで持ち運ぶこともできます。
ヘッドバンドは長さ調節が可能で、頭の大きさに合わせて使用することができます。
側圧はそこまで強くないので、長時間使用していても痛くなることはありません。
イヤカップはイヤモニ程ではありませんが、十分な遮音性の高さです。
イヤパッドは合皮ですが、使用感は非常に良いです。長時間使用しても蒸れたりすることはありませんし、耳が押されて痛くなってしまうこともありません。
ヘッドパッドも、ある程度クッション性があるので頭頂部が痛くなりにくいと思います。
重量もそこまで重くないので、肩や首が凝ることはありません。頭を動かしても振られる感じもありません。
ケーブルは1.2mのストレートコードを使用していますが、柔らかくて取り回しが非常に良いです。
当然ですが、モニターヘッドホンなのでマイク機能はありません。
音楽鑑賞での音質
Windows foobar2000でCDからリッピングしたFLACを再生してみました。
音質傾向は若干ドンシャリサウンド
まず、音楽鑑賞をした時の音質特性ですが、PCに直挿しでも音量は十分に取れてボヤケた音にはならず、ハッキリとクリアな明瞭感も感じる厚みのある音がします。
周波数特性としては、やや低音寄りな弱ドンシャリ傾向だと思います。
筆者の環境ではアンプに通していないのでこういったキャラクターなのかもしれませんが、結構ボーカルは引っ込み気味です。というか楽器がめちゃくちゃ近いです。
ギターの音は特に前に定位しています。ベースラインも聞き取りやすいですが、超低音が唸るような息苦しい感じではありません。
ドラムのハイハットやシンバルの音まで分離して聞こえて、全体を通して音の位置が把握しやすく、聞き取りやすいです。
分離感について
音の分離は非常に良いので、楽器を聞き分けたりするのに非常に向いてると思います。
ボーカルは引っ込み気味と書きましたが、楽器の音が近く感じるだけで、バンドサウンドの中でもコーラスを聞き分けることもできるし、ボーカルのエフェクトや、発音時のリップノイズやブレスもよく聞き取れると感じました。
女性ボーカルでも、サ行(歯擦音)が耳に刺さるような刺激的な音はしません。
Fear, and Loathing in Las Vegasのようなトラック数の多い複雑な楽曲でも分離感を保って再生できます。各パートを耳コピするのにも十分使えます。
音場は広くはありませんが、空間表現もしっかりできています。
大音量にしてもうるさく感じないので、大音量で音像をより近く聴き込むこともできます。
音色としてはブライトでもダークでもドライでもウェットでもなく、味付けはほぼ無い感じです。
味気ない音というわけではなく、音楽鑑賞をしても普通に楽しく聴くことができます。苦手なジャンルは特に無さそうな気がします。筆者はR&Bでも楽しく聞けました。
エージングは推奨
箱出しのときはもっとドライで低音寄りな硬い音だったので、大人しくなるまで数十時間のエージングはしたほうがいいと思います。
FPSゲームでの音質
FPSゲームでの音質ですが、若干低音寄りな特性ではあるものの、モニターヘッドホンの分離が良い特性は見事にマッチしていて、足音の聞き分けや銃声の方向の聞き分けがめちゃくちゃしやすいです。
イコライジングで無理矢理持ち上げたような音ではないため、自然な足音や銃声等のエフェクト音を楽しむことができます。
ATH-M50xのクリアで明瞭感のある篭もりを感じない高音質な特性のままで、ゲーム時でも方向感の定位は抜群に良いのでとても快適です。
ゲーミング製品でなくても情報収集で困ることはない
筆者はモニターヘッドホンでもゲームをプレイ中に音の情報収集で困ることは無かったです。
音場は広くないものの、分離の良い厚みのある音で、迫力がありながら、耳の近くで感じ取れる特性は、とにかくゲーム中音声全体の聞き分けがしやすいです。
銃声が耳に刺さるような感じも一切ありません、長時間使用していても聞き疲れもしません。
この聞き分けの良さは、フレンドとVCをしながらゲームをした時なんかに特に役立ってくれます。
高解像度でVCとゲームサウンドがダンゴにならない
VCとゲーム音が重なっても、帯域が被って足音が聞き取りにくくなることが無く、分離が良く明確に聞き分けができるため、VCをしていてもVCの不満が出てきません。
VCの音声も無理矢理持ち上げた足音のイコライジングのせいで破綻したりすることがないので、不快感が無く自然なフレンドの声を聞くことができます。
原音に忠実でキャラボイスが生々しい
また、キャラクターが喋るApex LegendsやVALORANT等のヒーローシューターでは、録音環境の良い所で収録されたであろう、個性あふれるキャラクターボイスを、品質の良い生々しい音声のまま聴くことができ、より没入感が得られました。
FPSゲームというと、ついつい足音や銃声を最重要視してしまいがちですが、キャラクターが登場するヒーローシューターなんかでは、こういった要素も大事にしていくと、よりゲームが楽しめるんじゃないかなと思います。
FPSゲームで重要な要素を捉えつつ、こういったハイクオリティな音声を楽しむスタイルというのを同時に提案できるのは、モニターヘッドホンならではなんじゃないでしょうか。
まさに唯一無二の存在だと思います。買ってみてよかったです。
ゲームをする時もエージング推奨
また、ゲームをする時も、箱出しの時はドライで低音寄りなカッチカチの硬い音だったので、大人しくなるまで数十時間のエージングはしたほうがいいと思います。
専用のノイズを流す方法もありますが、最終的には自分で使い続けるものなので、愛着が湧くように自分が納得の行くように、各自思い思いのやりかたでやってみてくださいね。
また、はじめの音は覚えておいたほうが変化中の楽しみも増えますよ。あれ?もしかして一粒で三度美味しい??
バーチャルサラウンドも表現できる
また、バーチャルサラウンドですが、リアル7.1chのヘッドホンでも無い限り、2つのスピーカーユニットしか無いステレオヘッドホンでは物理的にハードウェアで7.1ch処理ができません。
じゃあどこで処理しているかというと、付属のUSB-DAC(俗に言うアンプ)でソフトウェア処理、演算しています。
なので、要はモニターヘッドホンでも、バーチャルサラウンド対応のUSB-DACを買えばバーチャルサラウンドは使うことができるので、ヘッドホンが対応してるかどうかは気にしなくていいです。
それよりもゲーム側が頭部伝達関数(HRTF)に対応しているかどうかのほうが重要だと思っています。
詳しい内容は以下の記事で書いています。
まとめ
FPSゲームでも音質に妥協したくない人は必見のヘッドホンです。
マイクが別途必要でもいい人には強くおすすめできます。
音楽制作だけでなく、ゲームにおいても、抜群の定位で安定したパフォーマンスを発揮できるモニターヘッドホンです。
音の分離は全く問題の無いクオリティで足音も聞き分けることが可能です。1万円以上するイヤホン・ヘッドホンを使ったことが無い方であれば、こんな風に鳴っていたんだと新しい発見があると思います。
特にキャラボイスが生々しく聴こえるので、キャラが喋るヒーローシューターはもっと楽しくなりそうです。
音質や使い勝手自体にはコレといったウィークポイントは無さそうですが、よく考えるとゲーム用途ではマイクが必要になると思うので、マイクは単体で別に購入して使っていくことが前提になります。
マイクを持っていない場合はマイクも必要になってきます。
ついでにかっこいいマイクを揃えるとデスクはもっとかっこよくなるので、これを機会に揃えるのもアリなんじゃないでしょうか。
ココが良い
- DTMではド定番なだけある安定感
- ゲーミングヘッドセットでは得られないリアルな高音質でFPSゲームができる
- 見た目もゲーミングデザインではないので、デスクによく馴染む
- 音楽を聞いたり、動画編集をしたりするのにも適正があり、ゲーム以外の作業にも使える
ココはイマイチ
- マイクは別途必要になる